February 2012

February 15, 2012

圧縮記帳による課税の繰り延べ?

前回、「圧縮特別勘定」について述べましたが、その中で、一般的に圧縮記帳は、「課税の繰り延べ」と言われていると申し上げました。

しかし、私はこの考え方に疑問を持っています。

補助金や保険金をもとに、償却資産を取得した場合には、いずれその資産の減価償却額は、損金として利益を圧縮するわけですから、トータル的には、そもそも課税になっていないように思えてならないのです。

例えば、補助金や保険金を受け取って、法人の解散まで、何にも投資せず、そのまま残っていれば、受贈益に対し、課税はされているのですが、通常は経常費用の中で損金経理しているものと思います。

圧縮記帳における課税の繰り延べは、
もし補助金等を取得せずに、自己購入していた場合の課税関係と比較すれば、当然、圧縮記帳した翌期以降の税額は増えますが、
そもそも、補助金等によって本来の自己資金は投入されていないのです。

簡単な計算をしてみれば明らかですが、補助金等を受け取って資産を取得した場合と、補助金を受け取らずに、資産も取得しない場合とでの、通算所得に差はないのです。

昨夜、大学のゼミで使用した「財務会計論」のテキストを出して「圧縮記帳」のところを開いてみました。
当時も疑問に感じ、ゼミの発表者に質問をしたこを覚えています。結局時間切れで、スッキリしないまま、頭の片隅に埋もれていました。テキストにはアンダーラインと「?」が帰されていました。

まあ、議論の前提条件が、なにか違っているのかなと思います。単なる私の思い違いかもしれませんし、いずれまた、よく考えてみたいと思います。


February 13, 2012

保険金等の支払を受けた事業年度に代替資産の取得等が出来ない場合の会計処理について

↑ 長いタイトルで申し訳ありませんが、どういうことかお分かりでしょうか。

最近よく、こんな相談を受けます。
「昨年の震災によって、建物等が損壊し被災事業年度の翌年度である今期に保険金を受け取ったが、今期中には代替資産の取得や改良ができない。このままだと、保険金の分だけ会社の所得が例年より増え、税負担も重くなる。なんのための保険か分からない」というものです。

「被災事業年度」とは、昨年の3月11日が属する事業年度で、例えば6月決算の会社では、平成22年7月1日から平成23年6月30日になります。

被災事業年度には、被災事業用資産に対し、修繕費等を災害損失特別勘定を用いて見積もり計上することにより、保険差益を圧縮することが可能です。
例えば、6月決算の会社で、期末までに保険金を受け取ったが、今だ修理業者の手が回らず、修繕できないような場合に、修繕見積金額をもとに、災害損失特別勘定に負債計上するとともに、同額を費用に繰り入れ、保険差益を圧縮することが可能です。
この災害損失特別勘定は「被災事業年度」にのみ計上が認められているものですので、その翌年度には計上できないのです。

それで最近多いのは、3月決算の会社で、被災事業年度の翌年度である今期に保険金を受け取ったが、今だ建築規制や建築・修理業者の都合で、今期中にも代替資産の取得や改良ができずに困っているというものです。

そもそも、国や地方公共団体等からの補助金や損保会社からの保険金によって固定資産を取得することがありますが、この補助金や保険金に直接、税負担が及んだのでは、その効果が半減することになります。

そこで通常は「圧縮記帳」といって、保険差益等の収益分、固定資産の取得価額を減らすことによって、課税を繰り延べています

固定資産の取得価額を減らす分けですから、減価償却できる金額が減ることになり、将来的には、税負担はこの分だけ増えることになります。それで課税の繰り延べといわれています(直接ではありませんが、結果的には保険金といえども課税の対象になります)。

この圧縮記帳の考え方の延長として、保険金を受け取った期末までに、建物等を取得できないときに、先ほどの「災害損失特別勘定」のように、「圧縮特別勘定」を負債計上し、同額を費用に繰り入れ処理することを認めているのです。

この処理ができるのは、保険金等を受け取った事業年度の翌期首より原則として2年以内に代替資産を取得又は改良する見込みであるときです。

津波によって店舗等が流され、今だ建築できない地域においては、この特別勘定を用いた処理が今後多くなると思います。