January 16, 2011
連年贈与(れんねんぞうよ)
みなさん、「連年贈与」って聞いたことありますか?
税法上は「定期金」といいます。
今、なんでこのような話をするのかと言いますと、
毎年2月16日から「所得税」の確定申告受付が始まることは、みなさんご存知だと思いますが、
実は、前年に受けた贈与について、「贈与税」の申告が必要な方は、「所得税」よりも一足早く、2月1日から申告受付が始まるのです(申告期限は、どちらも3月15日です)。
まさに、今、その準備作業をしておりましたので、この機会にお話ししておきます。
毎年、贈与について相談を受けることが多々あります。
その際、注意しなければならないのは、この「定期金」の取扱いなのです。
贈与の課税制度は、「暦年課税」と「相続時精算課税」の二つに分けられます。
「暦年課税」は、毎年、1月1日からその年12月31日までに受けた贈与について、110万円の基礎控除を超えた贈与について課税されます。所得税と同じ累進課税となっていますので、その金額が多くなればより高い税率により贈与税が課せられます(最高税率50%)。
「相続時精算課税」は、贈与者が65歳以上の親、受贈者が20歳以上の子に、制限されますが、父母、それぞれ、2500万円までの贈与については(合計5000万円)贈与税を課さず、相続発生時にこの贈与財産と相続財産を合算して相続税の計算をするというものです(一度、相続時精算課税を選択した場合には、暦年課税による申告はできなくなります)。
相談で多いのは、「暦年課税」制度を使って、毎年、計画的に親から子に財産を贈与するというものです。
例えば、貯金が1000万円ある親が、子に贈与するのに、一度に1000万円だと、基礎控除の110万円を超えて贈与税がかかるので、毎年、100万円を10回に分けて贈与するといったような場合です。
このような場合、みなさんはどう考えますか?
実は、簡単なようで結構難しいのですね。
ネット上で他の税理士が書いたブログ等を見ると、このようなケースでは、何でもかんでも「連年贈与」として贈与税がかかるような見解をもっていらっしゃる方が多く見受けられます。
しかし、それは間違いです。
上の例でいえば、1000万円を何回かに分けて贈与するというような贈与契約があって、それを実行したのであれば、税法上、それは「定期金」となり、たとえ1年に受けた贈与金額が110万円以下であっても、贈与総額の1000万円をもとに評価して、一度に贈与税を納める必要があります。
それでは、
最初に総額1000万円を贈与するような契約が無く、毎年、贈与契約を結び、贈与していった結果、10年経ってみたら総額が1000万円だったとしたら、どうなるでしょうか。
これは、「連年贈与」には当たりません。
「連年贈与」になるためには、受贈者が最初に贈与を受けた時点で、1000万円の贈与を将来に渡って受ける「権利」が発生していなければならないのです。
この「連年贈与」という考え方は、何も金銭に限ったことだけではありません。不動産や他の資産についても同じことがいえます。ある土地や建物を何回かに分けて持分を移転(贈与)するというときも同じなのです。
この辺のところは、あとで納税者に迷惑をかけないように慎重な判断と対応が求められます。
最後に、根拠法令、通達等を挙げておきます。
相続税法
(定期金に関する権利の評価)
第二十四条 定期金給付契約で当該契約に関する権利を取得した時において定期金給付事由が発生しているものに関する権利の価額は、次に掲げる金額による。
一 有期定期金については、その残存期間に応じ、その残存期間に受けるべき給付金額の総額に、次に定める割合を乗じて計算した金額。ただし、一年間に受けるべき金額の十五倍を超えることができない。
残存期間が五年以下のもの 百分の七十
残存期間が五年を超え十年以下のもの 百分の六十
残存期間が十年を超え十五年以下のもの 百分の五十
残存期間が十五年を超え二十五年以下のもの 百分の四十
残存期間が二十五年を超え三十五年以下のもの 百分の三十
残存期間が三十五年を超えるもの 百分の二十
相続税基本通達
第24条《定期金に関する権利の評価》関係
(「定期金給付契約に関する権利」の意義)
24-1 法第24条に規定する「定期金給付契約に関する権利」とは、契約によりある期間定期的に金銭その他の給付を受けることを目的とする債権をいい、毎期に受ける支分債権ではなく、基本債権をいうのであるから留意する。
第1条の3《相続税の納税義務者》及び第1条の4《贈与税の納税義務者》共通関係
(財産取得の時期の原則)
1の3・1の4共-8 相続若しくは遺贈又は贈与による財産取得の時期は、次に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ次によるものとする。(昭38直審(資)4、昭57直資2-177、平15課資2-1、平17課資2-4改正)
(1) 相続又は遺贈の場合 相続の開始の時(失踪の宣告を相続開始原因とする相続については、民法第31条((失踪の宣告の効力))に規定する期間満了の時又は危難の去りたる時)
(2) 贈与の場合 書面によるものについてはその契約の効力の発生した時、書面によらないものについてはその履行の時
(財産取得の時期の特例)
1の3・1の4共-11 所有権等の移転の登記又は登録の目的となる財産について1の3・1の4共-8の(2)の取扱いにより贈与の時期を判定する場合において、その贈与の時期が明確でないときは、特に反証のない限りその登記又は登録があった時に贈与があったものとして取り扱うものとする。ただし、鉱業権の贈与については、鉱業原簿に登録した日に贈与があったものとして取り扱うものとする。(昭57直資2-177改正、平15課資2-1改正)
国税庁タックスアンサー
No.4402 贈与税がかかる場合
[平成22年4月1日現在法令等]
毎年、基礎控除額以下の贈与を受けた場合
Q1
親から毎年100万円ずつ10年間にわたって贈与を受ける場合には、各年の受贈額が110万円の基礎控除額以下ですので、贈与税がかからないことになりますか。
A1
各年の受贈額が110万円の基礎控除額以下である場合には、贈与税がかかりませんので申告は必要ありません。
ただし、10年間にわたって毎年100万円ずつ贈与を受けることが、贈与者との間で約束されている場合には、1年ごとに贈与を受けると考えるのではなく、約束をした年に、定期金に関する権利(10年間にわたり毎年100万円ずつの給付を受ける権利)の贈与を受けたものとして贈与税がかかりますので申告が必要です。
なお、その贈与者からの贈与について相続時精算課税を選択している場合には、贈与税がかかるか否かにかかわらず申告が必要です。
(相法24、相基通24-1)
税法上は「定期金」といいます。
今、なんでこのような話をするのかと言いますと、
毎年2月16日から「所得税」の確定申告受付が始まることは、みなさんご存知だと思いますが、
実は、前年に受けた贈与について、「贈与税」の申告が必要な方は、「所得税」よりも一足早く、2月1日から申告受付が始まるのです(申告期限は、どちらも3月15日です)。
まさに、今、その準備作業をしておりましたので、この機会にお話ししておきます。
毎年、贈与について相談を受けることが多々あります。
その際、注意しなければならないのは、この「定期金」の取扱いなのです。
贈与の課税制度は、「暦年課税」と「相続時精算課税」の二つに分けられます。
「暦年課税」は、毎年、1月1日からその年12月31日までに受けた贈与について、110万円の基礎控除を超えた贈与について課税されます。所得税と同じ累進課税となっていますので、その金額が多くなればより高い税率により贈与税が課せられます(最高税率50%)。
「相続時精算課税」は、贈与者が65歳以上の親、受贈者が20歳以上の子に、制限されますが、父母、それぞれ、2500万円までの贈与については(合計5000万円)贈与税を課さず、相続発生時にこの贈与財産と相続財産を合算して相続税の計算をするというものです(一度、相続時精算課税を選択した場合には、暦年課税による申告はできなくなります)。
相談で多いのは、「暦年課税」制度を使って、毎年、計画的に親から子に財産を贈与するというものです。
例えば、貯金が1000万円ある親が、子に贈与するのに、一度に1000万円だと、基礎控除の110万円を超えて贈与税がかかるので、毎年、100万円を10回に分けて贈与するといったような場合です。
このような場合、みなさんはどう考えますか?
実は、簡単なようで結構難しいのですね。
ネット上で他の税理士が書いたブログ等を見ると、このようなケースでは、何でもかんでも「連年贈与」として贈与税がかかるような見解をもっていらっしゃる方が多く見受けられます。
しかし、それは間違いです。
上の例でいえば、1000万円を何回かに分けて贈与するというような贈与契約があって、それを実行したのであれば、税法上、それは「定期金」となり、たとえ1年に受けた贈与金額が110万円以下であっても、贈与総額の1000万円をもとに評価して、一度に贈与税を納める必要があります。
それでは、
最初に総額1000万円を贈与するような契約が無く、毎年、贈与契約を結び、贈与していった結果、10年経ってみたら総額が1000万円だったとしたら、どうなるでしょうか。
これは、「連年贈与」には当たりません。
「連年贈与」になるためには、受贈者が最初に贈与を受けた時点で、1000万円の贈与を将来に渡って受ける「権利」が発生していなければならないのです。
この「連年贈与」という考え方は、何も金銭に限ったことだけではありません。不動産や他の資産についても同じことがいえます。ある土地や建物を何回かに分けて持分を移転(贈与)するというときも同じなのです。
この辺のところは、あとで納税者に迷惑をかけないように慎重な判断と対応が求められます。
最後に、根拠法令、通達等を挙げておきます。
相続税法
(定期金に関する権利の評価)
第二十四条 定期金給付契約で当該契約に関する権利を取得した時において定期金給付事由が発生しているものに関する権利の価額は、次に掲げる金額による。
一 有期定期金については、その残存期間に応じ、その残存期間に受けるべき給付金額の総額に、次に定める割合を乗じて計算した金額。ただし、一年間に受けるべき金額の十五倍を超えることができない。
残存期間が五年以下のもの 百分の七十
残存期間が五年を超え十年以下のもの 百分の六十
残存期間が十年を超え十五年以下のもの 百分の五十
残存期間が十五年を超え二十五年以下のもの 百分の四十
残存期間が二十五年を超え三十五年以下のもの 百分の三十
残存期間が三十五年を超えるもの 百分の二十
相続税基本通達
第24条《定期金に関する権利の評価》関係
(「定期金給付契約に関する権利」の意義)
24-1 法第24条に規定する「定期金給付契約に関する権利」とは、契約によりある期間定期的に金銭その他の給付を受けることを目的とする債権をいい、毎期に受ける支分債権ではなく、基本債権をいうのであるから留意する。
第1条の3《相続税の納税義務者》及び第1条の4《贈与税の納税義務者》共通関係
(財産取得の時期の原則)
1の3・1の4共-8 相続若しくは遺贈又は贈与による財産取得の時期は、次に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ次によるものとする。(昭38直審(資)4、昭57直資2-177、平15課資2-1、平17課資2-4改正)
(1) 相続又は遺贈の場合 相続の開始の時(失踪の宣告を相続開始原因とする相続については、民法第31条((失踪の宣告の効力))に規定する期間満了の時又は危難の去りたる時)
(2) 贈与の場合 書面によるものについてはその契約の効力の発生した時、書面によらないものについてはその履行の時
(財産取得の時期の特例)
1の3・1の4共-11 所有権等の移転の登記又は登録の目的となる財産について1の3・1の4共-8の(2)の取扱いにより贈与の時期を判定する場合において、その贈与の時期が明確でないときは、特に反証のない限りその登記又は登録があった時に贈与があったものとして取り扱うものとする。ただし、鉱業権の贈与については、鉱業原簿に登録した日に贈与があったものとして取り扱うものとする。(昭57直資2-177改正、平15課資2-1改正)
国税庁タックスアンサー
No.4402 贈与税がかかる場合
[平成22年4月1日現在法令等]
毎年、基礎控除額以下の贈与を受けた場合
Q1
親から毎年100万円ずつ10年間にわたって贈与を受ける場合には、各年の受贈額が110万円の基礎控除額以下ですので、贈与税がかからないことになりますか。
A1
各年の受贈額が110万円の基礎控除額以下である場合には、贈与税がかかりませんので申告は必要ありません。
ただし、10年間にわたって毎年100万円ずつ贈与を受けることが、贈与者との間で約束されている場合には、1年ごとに贈与を受けると考えるのではなく、約束をした年に、定期金に関する権利(10年間にわたり毎年100万円ずつの給付を受ける権利)の贈与を受けたものとして贈与税がかかりますので申告が必要です。
なお、その贈与者からの贈与について相続時精算課税を選択している場合には、贈与税がかかるか否かにかかわらず申告が必要です。
(相法24、相基通24-1)
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