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June 18, 2013
February 15, 2012
圧縮記帳による課税の繰り延べ?
前回、「圧縮特別勘定」について述べましたが、その中で、一般的に圧縮記帳は、「課税の繰り延べ」と言われていると申し上げました。
しかし、私はこの考え方に疑問を持っています。
補助金や保険金をもとに、償却資産を取得した場合には、いずれその資産の減価償却額は、損金として利益を圧縮するわけですから、トータル的には、そもそも課税になっていないように思えてならないのです。
例えば、補助金や保険金を受け取って、法人の解散まで、何にも投資せず、そのまま残っていれば、受贈益に対し、課税はされているのですが、通常は経常費用の中で損金経理しているものと思います。
圧縮記帳における課税の繰り延べは、
もし補助金等を取得せずに、自己購入していた場合の課税関係と比較すれば、当然、圧縮記帳した翌期以降の税額は増えますが、
そもそも、補助金等によって本来の自己資金は投入されていないのです。
簡単な計算をしてみれば明らかですが、補助金等を受け取って資産を取得した場合と、補助金を受け取らずに、資産も取得しない場合とでの、通算所得に差はないのです。
昨夜、大学のゼミで使用した「財務会計論」のテキストを出して「圧縮記帳」のところを開いてみました。
当時も疑問に感じ、ゼミの発表者に質問をしたこを覚えています。結局時間切れで、スッキリしないまま、頭の片隅に埋もれていました。テキストにはアンダーラインと「?」が帰されていました。
まあ、議論の前提条件が、なにか違っているのかなと思います。単なる私の思い違いかもしれませんし、いずれまた、よく考えてみたいと思います。
しかし、私はこの考え方に疑問を持っています。
補助金や保険金をもとに、償却資産を取得した場合には、いずれその資産の減価償却額は、損金として利益を圧縮するわけですから、トータル的には、そもそも課税になっていないように思えてならないのです。
例えば、補助金や保険金を受け取って、法人の解散まで、何にも投資せず、そのまま残っていれば、受贈益に対し、課税はされているのですが、通常は経常費用の中で損金経理しているものと思います。
圧縮記帳における課税の繰り延べは、
もし補助金等を取得せずに、自己購入していた場合の課税関係と比較すれば、当然、圧縮記帳した翌期以降の税額は増えますが、
そもそも、補助金等によって本来の自己資金は投入されていないのです。
簡単な計算をしてみれば明らかですが、補助金等を受け取って資産を取得した場合と、補助金を受け取らずに、資産も取得しない場合とでの、通算所得に差はないのです。
昨夜、大学のゼミで使用した「財務会計論」のテキストを出して「圧縮記帳」のところを開いてみました。
当時も疑問に感じ、ゼミの発表者に質問をしたこを覚えています。結局時間切れで、スッキリしないまま、頭の片隅に埋もれていました。テキストにはアンダーラインと「?」が帰されていました。
まあ、議論の前提条件が、なにか違っているのかなと思います。単なる私の思い違いかもしれませんし、いずれまた、よく考えてみたいと思います。
February 13, 2012
保険金等の支払を受けた事業年度に代替資産の取得等が出来ない場合の会計処理について
↑ 長いタイトルで申し訳ありませんが、どういうことかお分かりでしょうか。
最近よく、こんな相談を受けます。
「昨年の震災によって、建物等が損壊し、被災事業年度の翌年度である今期に保険金を受け取ったが、今期中には代替資産の取得や改良ができない。このままだと、保険金の分だけ会社の所得が例年より増え、税負担も重くなる。なんのための保険か分からない」というものです。
「被災事業年度」とは、昨年の3月11日が属する事業年度で、例えば6月決算の会社では、平成22年7月1日から平成23年6月30日になります。
被災事業年度には、被災事業用資産に対し、修繕費等を災害損失特別勘定を用いて見積もり計上することにより、保険差益を圧縮することが可能です。
例えば、6月決算の会社で、期末までに保険金を受け取ったが、今だ修理業者の手が回らず、修繕できないような場合に、修繕見積金額をもとに、災害損失特別勘定に負債計上するとともに、同額を費用に繰り入れ、保険差益を圧縮することが可能です。
この災害損失特別勘定は「被災事業年度」にのみ計上が認められているものですので、その翌年度には計上できないのです。
それで最近多いのは、3月決算の会社で、被災事業年度の翌年度である今期に保険金を受け取ったが、今だ建築規制や建築・修理業者の都合で、今期中にも代替資産の取得や改良ができずに困っているというものです。
そもそも、国や地方公共団体等からの補助金や損保会社からの保険金によって固定資産を取得することがありますが、この補助金や保険金に直接、税負担が及んだのでは、その効果が半減することになります。
そこで通常は「圧縮記帳」といって、保険差益等の収益分、固定資産の取得価額を減らすことによって、課税を繰り延べています。
固定資産の取得価額を減らす分けですから、減価償却できる金額が減ることになり、将来的には、税負担はこの分だけ増えることになります。それで課税の繰り延べといわれています(直接ではありませんが、結果的には保険金といえども課税の対象になります)。
この圧縮記帳の考え方の延長として、保険金を受け取った期末までに、建物等を取得できないときに、先ほどの「災害損失特別勘定」のように、「圧縮特別勘定」を負債計上し、同額を費用に繰り入れ処理することを認めているのです。
この処理ができるのは、保険金等を受け取った事業年度の翌期首より原則として2年以内に代替資産を取得又は改良する見込みであるときです。
津波によって店舗等が流され、今だ建築できない地域においては、この特別勘定を用いた処理が今後多くなると思います。
最近よく、こんな相談を受けます。
「昨年の震災によって、建物等が損壊し、被災事業年度の翌年度である今期に保険金を受け取ったが、今期中には代替資産の取得や改良ができない。このままだと、保険金の分だけ会社の所得が例年より増え、税負担も重くなる。なんのための保険か分からない」というものです。
「被災事業年度」とは、昨年の3月11日が属する事業年度で、例えば6月決算の会社では、平成22年7月1日から平成23年6月30日になります。
被災事業年度には、被災事業用資産に対し、修繕費等を災害損失特別勘定を用いて見積もり計上することにより、保険差益を圧縮することが可能です。
例えば、6月決算の会社で、期末までに保険金を受け取ったが、今だ修理業者の手が回らず、修繕できないような場合に、修繕見積金額をもとに、災害損失特別勘定に負債計上するとともに、同額を費用に繰り入れ、保険差益を圧縮することが可能です。
この災害損失特別勘定は「被災事業年度」にのみ計上が認められているものですので、その翌年度には計上できないのです。
それで最近多いのは、3月決算の会社で、被災事業年度の翌年度である今期に保険金を受け取ったが、今だ建築規制や建築・修理業者の都合で、今期中にも代替資産の取得や改良ができずに困っているというものです。
そもそも、国や地方公共団体等からの補助金や損保会社からの保険金によって固定資産を取得することがありますが、この補助金や保険金に直接、税負担が及んだのでは、その効果が半減することになります。
そこで通常は「圧縮記帳」といって、保険差益等の収益分、固定資産の取得価額を減らすことによって、課税を繰り延べています。
固定資産の取得価額を減らす分けですから、減価償却できる金額が減ることになり、将来的には、税負担はこの分だけ増えることになります。それで課税の繰り延べといわれています(直接ではありませんが、結果的には保険金といえども課税の対象になります)。
この圧縮記帳の考え方の延長として、保険金を受け取った期末までに、建物等を取得できないときに、先ほどの「災害損失特別勘定」のように、「圧縮特別勘定」を負債計上し、同額を費用に繰り入れ処理することを認めているのです。
この処理ができるのは、保険金等を受け取った事業年度の翌期首より原則として2年以内に代替資産を取得又は改良する見込みであるときです。
津波によって店舗等が流され、今だ建築できない地域においては、この特別勘定を用いた処理が今後多くなると思います。
November 20, 2011
June 29, 2011
り災(届出)証明 所得税減免措置①
先週やっと、自宅の「り災証明」を得るため、区役所に行って申請(届出)してきました(現地確認まで2~3ヶ月かかるそうです)。たぶん我が家は半壊以上の判定になるのではないかと思います。けっこう、あっちこっち、被害があります。
庁舎内は、高速道路通行料免除のための、「り災届出証明書」を取得する人でいっぱいでした(7月31日までは、この届出証明書があれば無料で通行できるようです)。
東北税理士会では、震災後、各地で無料税務相談会を行っています(7月には私も県内の税務署会場で執務にあたります)。
前回は、震災に係る所得税の取り扱いについて、目次だけ羅列しましたが、照会の多い点、間違いやすい点等を中心に、何回かに分けて解説したいと思います。
最初に、誰がどのように減免をうけることが出来るのか、その概略をお話します。
まず、減免を受けることが出来る人は、
サラリーマンや会社役員、個人事業者など、平成22年分の所得に対し、既に源泉納付または申告納税した人、またはこれから申告し納税する人です(源泉納付している人は確定申告により、申告納税した人は、更正の請求によりそれぞれ還付をうけます)。
個人事業者の平成22年分の所得計算において、震災による純損失がある場合には、さらに1年間さかのぼり、平成21年分の所得に対し納めた所得税の還付をうけることもできます。
減免の対象は、
住宅、家財、車両などの個人資産や
棚卸資産、事業用・業務用固定資産などの事業用資産の被災損失(関連支出を含む)です。
事業用資産については、所有者である事業主において、減免をうけることになりますが、
個人資産の場合は、必ずしも所有者だけが減免をうけるとは限りません。
資産の所有者を「控除対象配偶者」または「扶養親族」としている納税者も、その資産に係る損失をもって減免をうけることができます。
庁舎内は、高速道路通行料免除のための、「り災届出証明書」を取得する人でいっぱいでした(7月31日までは、この届出証明書があれば無料で通行できるようです)。
東北税理士会では、震災後、各地で無料税務相談会を行っています(7月には私も県内の税務署会場で執務にあたります)。
前回は、震災に係る所得税の取り扱いについて、目次だけ羅列しましたが、照会の多い点、間違いやすい点等を中心に、何回かに分けて解説したいと思います。
最初に、誰がどのように減免をうけることが出来るのか、その概略をお話します。
まず、減免を受けることが出来る人は、
サラリーマンや会社役員、個人事業者など、平成22年分の所得に対し、既に源泉納付または申告納税した人、またはこれから申告し納税する人です(源泉納付している人は確定申告により、申告納税した人は、更正の請求によりそれぞれ還付をうけます)。
個人事業者の平成22年分の所得計算において、震災による純損失がある場合には、さらに1年間さかのぼり、平成21年分の所得に対し納めた所得税の還付をうけることもできます。
減免の対象は、
住宅、家財、車両などの個人資産や
棚卸資産、事業用・業務用固定資産などの事業用資産の被災損失(関連支出を含む)です。
事業用資産については、所有者である事業主において、減免をうけることになりますが、
個人資産の場合は、必ずしも所有者だけが減免をうけるとは限りません。
資産の所有者を「控除対象配偶者」または「扶養親族」としている納税者も、その資産に係る損失をもって減免をうけることができます。
March 01, 2011
新しい年度が始まります
官公庁では4月から新年度が始まり、新しい制度や施策の多くがスタート
します。企業においては4月に行わなければならない事務がいろいろありま
す。主な事項は以下のとおりですので、漏れがないように確認しておきまし
ょう。
(1)社員の入社や退社があった場合、社会保険、労働保険の手続きを行う。
(2)労働保険(雇用保険・労災保険)の年度更新手続きをする。
(3)新入社員からは「扶養控除等異動申告書」を提出してもらう。扶養親族に
異動があった社員にも同様に「扶養控除等異動申告書」を提出してもらい、
賃金台帳を訂正する。
(4)3月決算法人は株主総会や法人税の申告に向けた準備をする。
(5)4月に昇給を考えている企業は、個人別昇給額が決定次第、給与計算の基
礎金額の切り替えをする。
(6)自社の予算(新年度)について再度確認する。なお、資金繰りについては
常にチェックし、資金ショートしそうなときは早めに対応する。
(7)4月から適用となる税制改正や自社の事業等に関係する法・制度改正を確
認しておく。 など
します。企業においては4月に行わなければならない事務がいろいろありま
す。主な事項は以下のとおりですので、漏れがないように確認しておきまし
ょう。
(1)社員の入社や退社があった場合、社会保険、労働保険の手続きを行う。
(2)労働保険(雇用保険・労災保険)の年度更新手続きをする。
(3)新入社員からは「扶養控除等異動申告書」を提出してもらう。扶養親族に
異動があった社員にも同様に「扶養控除等異動申告書」を提出してもらい、
賃金台帳を訂正する。
(4)3月決算法人は株主総会や法人税の申告に向けた準備をする。
(5)4月に昇給を考えている企業は、個人別昇給額が決定次第、給与計算の基
礎金額の切り替えをする。
(6)自社の予算(新年度)について再度確認する。なお、資金繰りについては
常にチェックし、資金ショートしそうなときは早めに対応する。
(7)4月から適用となる税制改正や自社の事業等に関係する法・制度改正を確
認しておく。 など
January 16, 2011
連年贈与(れんねんぞうよ)
みなさん、「連年贈与」って聞いたことありますか?
税法上は「定期金」といいます。
今、なんでこのような話をするのかと言いますと、
毎年2月16日から「所得税」の確定申告受付が始まることは、みなさんご存知だと思いますが、
実は、前年に受けた贈与について、「贈与税」の申告が必要な方は、「所得税」よりも一足早く、2月1日から申告受付が始まるのです(申告期限は、どちらも3月15日です)。
まさに、今、その準備作業をしておりましたので、この機会にお話ししておきます。
毎年、贈与について相談を受けることが多々あります。
その際、注意しなければならないのは、この「定期金」の取扱いなのです。
贈与の課税制度は、「暦年課税」と「相続時精算課税」の二つに分けられます。
「暦年課税」は、毎年、1月1日からその年12月31日までに受けた贈与について、110万円の基礎控除を超えた贈与について課税されます。所得税と同じ累進課税となっていますので、その金額が多くなればより高い税率により贈与税が課せられます(最高税率50%)。
「相続時精算課税」は、贈与者が65歳以上の親、受贈者が20歳以上の子に、制限されますが、父母、それぞれ、2500万円までの贈与については(合計5000万円)贈与税を課さず、相続発生時にこの贈与財産と相続財産を合算して相続税の計算をするというものです(一度、相続時精算課税を選択した場合には、暦年課税による申告はできなくなります)。
相談で多いのは、「暦年課税」制度を使って、毎年、計画的に親から子に財産を贈与するというものです。
例えば、貯金が1000万円ある親が、子に贈与するのに、一度に1000万円だと、基礎控除の110万円を超えて贈与税がかかるので、毎年、100万円を10回に分けて贈与するといったような場合です。
このような場合、みなさんはどう考えますか?
実は、簡単なようで結構難しいのですね。
ネット上で他の税理士が書いたブログ等を見ると、このようなケースでは、何でもかんでも「連年贈与」として贈与税がかかるような見解をもっていらっしゃる方が多く見受けられます。
しかし、それは間違いです。
上の例でいえば、1000万円を何回かに分けて贈与するというような贈与契約があって、それを実行したのであれば、税法上、それは「定期金」となり、たとえ1年に受けた贈与金額が110万円以下であっても、贈与総額の1000万円をもとに評価して、一度に贈与税を納める必要があります。
それでは、
最初に総額1000万円を贈与するような契約が無く、毎年、贈与契約を結び、贈与していった結果、10年経ってみたら総額が1000万円だったとしたら、どうなるでしょうか。
これは、「連年贈与」には当たりません。
「連年贈与」になるためには、受贈者が最初に贈与を受けた時点で、1000万円の贈与を将来に渡って受ける「権利」が発生していなければならないのです。
この「連年贈与」という考え方は、何も金銭に限ったことだけではありません。不動産や他の資産についても同じことがいえます。ある土地や建物を何回かに分けて持分を移転(贈与)するというときも同じなのです。
この辺のところは、あとで納税者に迷惑をかけないように慎重な判断と対応が求められます。
最後に、根拠法令、通達等を挙げておきます。
相続税法
(定期金に関する権利の評価)
第二十四条 定期金給付契約で当該契約に関する権利を取得した時において定期金給付事由が発生しているものに関する権利の価額は、次に掲げる金額による。
一 有期定期金については、その残存期間に応じ、その残存期間に受けるべき給付金額の総額に、次に定める割合を乗じて計算した金額。ただし、一年間に受けるべき金額の十五倍を超えることができない。
残存期間が五年以下のもの 百分の七十
残存期間が五年を超え十年以下のもの 百分の六十
残存期間が十年を超え十五年以下のもの 百分の五十
残存期間が十五年を超え二十五年以下のもの 百分の四十
残存期間が二十五年を超え三十五年以下のもの 百分の三十
残存期間が三十五年を超えるもの 百分の二十
相続税基本通達
第24条《定期金に関する権利の評価》関係
(「定期金給付契約に関する権利」の意義)
24-1 法第24条に規定する「定期金給付契約に関する権利」とは、契約によりある期間定期的に金銭その他の給付を受けることを目的とする債権をいい、毎期に受ける支分債権ではなく、基本債権をいうのであるから留意する。
第1条の3《相続税の納税義務者》及び第1条の4《贈与税の納税義務者》共通関係
(財産取得の時期の原則)
1の3・1の4共-8 相続若しくは遺贈又は贈与による財産取得の時期は、次に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ次によるものとする。(昭38直審(資)4、昭57直資2-177、平15課資2-1、平17課資2-4改正)
(1) 相続又は遺贈の場合 相続の開始の時(失踪の宣告を相続開始原因とする相続については、民法第31条((失踪の宣告の効力))に規定する期間満了の時又は危難の去りたる時)
(2) 贈与の場合 書面によるものについてはその契約の効力の発生した時、書面によらないものについてはその履行の時
(財産取得の時期の特例)
1の3・1の4共-11 所有権等の移転の登記又は登録の目的となる財産について1の3・1の4共-8の(2)の取扱いにより贈与の時期を判定する場合において、その贈与の時期が明確でないときは、特に反証のない限りその登記又は登録があった時に贈与があったものとして取り扱うものとする。ただし、鉱業権の贈与については、鉱業原簿に登録した日に贈与があったものとして取り扱うものとする。(昭57直資2-177改正、平15課資2-1改正)
国税庁タックスアンサー
No.4402 贈与税がかかる場合
[平成22年4月1日現在法令等]
毎年、基礎控除額以下の贈与を受けた場合
Q1
親から毎年100万円ずつ10年間にわたって贈与を受ける場合には、各年の受贈額が110万円の基礎控除額以下ですので、贈与税がかからないことになりますか。
A1
各年の受贈額が110万円の基礎控除額以下である場合には、贈与税がかかりませんので申告は必要ありません。
ただし、10年間にわたって毎年100万円ずつ贈与を受けることが、贈与者との間で約束されている場合には、1年ごとに贈与を受けると考えるのではなく、約束をした年に、定期金に関する権利(10年間にわたり毎年100万円ずつの給付を受ける権利)の贈与を受けたものとして贈与税がかかりますので申告が必要です。
なお、その贈与者からの贈与について相続時精算課税を選択している場合には、贈与税がかかるか否かにかかわらず申告が必要です。
(相法24、相基通24-1)
税法上は「定期金」といいます。
今、なんでこのような話をするのかと言いますと、
毎年2月16日から「所得税」の確定申告受付が始まることは、みなさんご存知だと思いますが、
実は、前年に受けた贈与について、「贈与税」の申告が必要な方は、「所得税」よりも一足早く、2月1日から申告受付が始まるのです(申告期限は、どちらも3月15日です)。
まさに、今、その準備作業をしておりましたので、この機会にお話ししておきます。
毎年、贈与について相談を受けることが多々あります。
その際、注意しなければならないのは、この「定期金」の取扱いなのです。
贈与の課税制度は、「暦年課税」と「相続時精算課税」の二つに分けられます。
「暦年課税」は、毎年、1月1日からその年12月31日までに受けた贈与について、110万円の基礎控除を超えた贈与について課税されます。所得税と同じ累進課税となっていますので、その金額が多くなればより高い税率により贈与税が課せられます(最高税率50%)。
「相続時精算課税」は、贈与者が65歳以上の親、受贈者が20歳以上の子に、制限されますが、父母、それぞれ、2500万円までの贈与については(合計5000万円)贈与税を課さず、相続発生時にこの贈与財産と相続財産を合算して相続税の計算をするというものです(一度、相続時精算課税を選択した場合には、暦年課税による申告はできなくなります)。
相談で多いのは、「暦年課税」制度を使って、毎年、計画的に親から子に財産を贈与するというものです。
例えば、貯金が1000万円ある親が、子に贈与するのに、一度に1000万円だと、基礎控除の110万円を超えて贈与税がかかるので、毎年、100万円を10回に分けて贈与するといったような場合です。
このような場合、みなさんはどう考えますか?
実は、簡単なようで結構難しいのですね。
ネット上で他の税理士が書いたブログ等を見ると、このようなケースでは、何でもかんでも「連年贈与」として贈与税がかかるような見解をもっていらっしゃる方が多く見受けられます。
しかし、それは間違いです。
上の例でいえば、1000万円を何回かに分けて贈与するというような贈与契約があって、それを実行したのであれば、税法上、それは「定期金」となり、たとえ1年に受けた贈与金額が110万円以下であっても、贈与総額の1000万円をもとに評価して、一度に贈与税を納める必要があります。
それでは、
最初に総額1000万円を贈与するような契約が無く、毎年、贈与契約を結び、贈与していった結果、10年経ってみたら総額が1000万円だったとしたら、どうなるでしょうか。
これは、「連年贈与」には当たりません。
「連年贈与」になるためには、受贈者が最初に贈与を受けた時点で、1000万円の贈与を将来に渡って受ける「権利」が発生していなければならないのです。
この「連年贈与」という考え方は、何も金銭に限ったことだけではありません。不動産や他の資産についても同じことがいえます。ある土地や建物を何回かに分けて持分を移転(贈与)するというときも同じなのです。
この辺のところは、あとで納税者に迷惑をかけないように慎重な判断と対応が求められます。
最後に、根拠法令、通達等を挙げておきます。
相続税法
(定期金に関する権利の評価)
第二十四条 定期金給付契約で当該契約に関する権利を取得した時において定期金給付事由が発生しているものに関する権利の価額は、次に掲げる金額による。
一 有期定期金については、その残存期間に応じ、その残存期間に受けるべき給付金額の総額に、次に定める割合を乗じて計算した金額。ただし、一年間に受けるべき金額の十五倍を超えることができない。
残存期間が五年以下のもの 百分の七十
残存期間が五年を超え十年以下のもの 百分の六十
残存期間が十年を超え十五年以下のもの 百分の五十
残存期間が十五年を超え二十五年以下のもの 百分の四十
残存期間が二十五年を超え三十五年以下のもの 百分の三十
残存期間が三十五年を超えるもの 百分の二十
相続税基本通達
第24条《定期金に関する権利の評価》関係
(「定期金給付契約に関する権利」の意義)
24-1 法第24条に規定する「定期金給付契約に関する権利」とは、契約によりある期間定期的に金銭その他の給付を受けることを目的とする債権をいい、毎期に受ける支分債権ではなく、基本債権をいうのであるから留意する。
第1条の3《相続税の納税義務者》及び第1条の4《贈与税の納税義務者》共通関係
(財産取得の時期の原則)
1の3・1の4共-8 相続若しくは遺贈又は贈与による財産取得の時期は、次に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ次によるものとする。(昭38直審(資)4、昭57直資2-177、平15課資2-1、平17課資2-4改正)
(1) 相続又は遺贈の場合 相続の開始の時(失踪の宣告を相続開始原因とする相続については、民法第31条((失踪の宣告の効力))に規定する期間満了の時又は危難の去りたる時)
(2) 贈与の場合 書面によるものについてはその契約の効力の発生した時、書面によらないものについてはその履行の時
(財産取得の時期の特例)
1の3・1の4共-11 所有権等の移転の登記又は登録の目的となる財産について1の3・1の4共-8の(2)の取扱いにより贈与の時期を判定する場合において、その贈与の時期が明確でないときは、特に反証のない限りその登記又は登録があった時に贈与があったものとして取り扱うものとする。ただし、鉱業権の贈与については、鉱業原簿に登録した日に贈与があったものとして取り扱うものとする。(昭57直資2-177改正、平15課資2-1改正)
国税庁タックスアンサー
No.4402 贈与税がかかる場合
[平成22年4月1日現在法令等]
毎年、基礎控除額以下の贈与を受けた場合
Q1
親から毎年100万円ずつ10年間にわたって贈与を受ける場合には、各年の受贈額が110万円の基礎控除額以下ですので、贈与税がかからないことになりますか。
A1
各年の受贈額が110万円の基礎控除額以下である場合には、贈与税がかかりませんので申告は必要ありません。
ただし、10年間にわたって毎年100万円ずつ贈与を受けることが、贈与者との間で約束されている場合には、1年ごとに贈与を受けると考えるのではなく、約束をした年に、定期金に関する権利(10年間にわたり毎年100万円ずつの給付を受ける権利)の贈与を受けたものとして贈与税がかかりますので申告が必要です。
なお、その贈与者からの贈与について相続時精算課税を選択している場合には、贈与税がかかるか否かにかかわらず申告が必要です。
(相法24、相基通24-1)